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個性ドリブン#5[倉林 真知子]- シモツカレヤンキー コラボ企画 –

by クロ
個性ドリブン#5[倉林 真知子]- シモツカレヤンキー コラボ企画 –

しもつかれにインスパイアされたアパレルブランド「SHIMOTSUKARE YANKEE(シモツカレヤンキー)」。

ただ洋服を販売するブランドではなく、しもつかれを「栃木の個性」と定義し、ローカルで個性を武器に生き抜く人を応援するするというブランドコンセプトがあります。

本企画「個性ドリブン」は、シモツカレヤンキーのブランドプロデューサーであり、栃木市のブランディングデザイナー、しもつかれブランド会議(SBM)代表の青栁徹が、これまでコラボレーションさせていただいたブランドや人物を「個性」を切り口に紹介する企画です。

第5回目は、昨年開催された「しもつかれウィーク2020」で、「しもつかれ巾着袋」「サーモンヘッドコート」を提供してくれたアパレルブランド「ANT」の倉林真知子さん。

柄物をデザインとして取り入れた独特の世界観や、個性をどう捉え、武器にしているのかを伺いました。

個性ドリブン#5[倉林 真知子]- シモツカレヤンキー コラボ企画 –

トータルでプロデュース=「私らしさ」

青栁(以下、青):栃木でオリジナルブランドのアパレルをやっていることが面白いと思っていて、作品を見ていると凄く自分を出している気がするんだけど、ANT(倉林さんのオリジナルブランド)の立ち上げはどんな感じだった?

倉林(以下、倉):立ち上げが2003年。都内で働いていた頃に知り合った絵を描く女の子と、カメラマンをしていた子の3人で立ち上げたブランドで、新宿のフリマがスタートでした。カメラマンの写真づくりがメインで私の服はおまけ。アパレルで仕事はしていたけど洋服をつくることに興味はなくて(笑)。写真撮影するのにモデルに着てもらうイメージ通りの服が見つからなかったから、小物をつくり、服をつくりと足していった結果、ANTができあがりました。
縫製系の学校も行ってなくて独学で覚えたんです。写真に合わせて制作してたので、洋服、アクセサリー、バッグなどオールジャンルでつくれるようになりました。
普通作家さんて、何か特定のものをつくる人が多いけど、私はコーディネイト主体なので必要なものをトータルでつくります。

青:自分なりの世界観をつくるのことが目的だから、必要なものは自分でつくるわけだ。

倉:そうです。靴はつくれないので、古着を扱う「グラスホッパー」というブランドを新しく立ち上げて、自分でつくれないものは古着を活用してます。コーディネートを楽しむブランドなので、ないものは古着MIXで補います。

青:今のアトリエ(Studio Unknown)は入ってどれくらい?

倉:移動して2年です。前は自宅兼アトリエでさくら市で活動していました。東京から活動をスタートして、宇都宮、さくら市、宇都宮と移動しています。私、職歴変なんですけど、学校が医療系だったので医療事務の仕事から始まり、それを辞めてアパレルで販売員として働いてました。
そもそも空間を動かすことが好きで。簡単に言うと模様替えですけど(笑)。洋服屋で働いていた時も、販売よりディスプレイに興味があって、ショーウィンドーの中ってハイブランドになると専属の人しか入れないんですけど、それになりたくて(笑)。販売員よりは裏方がやりたくて勉強しようと思って東京に行ったんですけど、なぜか建築事務所に入るみたいな(笑)。でも基礎がないから、結局アパレルに戻るんですけどね(笑)。
裏方というか、ブランドを動かす方が好きで、そのブランドをいかに見てもらえるかを考えるのかが楽しかった。

青:裏でコントロールする方が好きなんだ。

倉:百貨店と商談したり、企画考えたり、ブランドのPR的な仕事をしてました。それが楽しかった。今もその延長で、洋服をつくるより楽しみ方を提案する方が好きですね。

青:洋服の使い方の提案もするんだ。

倉:見せ方で洋服は変わるし、空間でも変わるからディスプレーは凄く大事。その感覚を全部兼ね備える人は作家さんでは少ないですよね。つくれるけどディスプレーはギャラリーにお任せみたいな。私はディスプレイも含めてで、飾るために什器も自作したりする。人に着せる時も一緒で、この靴を良く見せるためには何を着せれば良いかを逆算で考えてて。なので展示会があればテーマが欲しくなる。なければ勝手に自分でつくって、それに合わせて商品を提供する方が好き。
去年の「しもつかれウィーク」の時のような「しもつかれ縛り」みたいな方がつくりやすい。普段つくらない物をつくるから、テーマにどれだけ合わせられるか考えることが面白くて。

青:まさにブランドを自分自身で全て構築してるってことだよね。僕もブランドは「世界観」だと思ってて、その世界観に触れたくてファンはそのブランドから買うことになるからね。それを自分で全部やってるって面白い。

倉:服は好きだったけど、自分でつくろうとは思ってなかった(笑)。

青:服自体は小さい頃から好きだった?

倉:いや、自分が着たい服を着せてもらえなかったし、選ばせてももらえなくて。母が買ってきた服だったから自由じゃなくて好きじゃなかった。私と母は全く好みが合わなくて(笑)。

青:センスが合わなかった(笑)。

倉:自分で自由に服が選べるようになってから楽しくなった(笑)。
女の子らしい子ではなくて、スカート履きたいわけでもなく、手芸もやらなかった。

青:転換点になったのはいつ?

倉:海外でマリンスポーツをしていた時期があって、帰ってきてからアパレルの仕事に就いたんですよ。

青:アパレルを選んだことも深い意味はなかったと。

倉:たまたま洋服屋で働いてみようかなと(笑)。

青:急に洋服なんだね(笑)。もしかしたら洋服じゃなくてもいいのかな?服づくりを手段だと考えると、洋服をつくることで自分の何かを表現していると思うんだ。

倉:それがディスプレーなんだと思う。本当は大工さんになりたいというのがずっとあって(笑)。つくるのは好きだけど、裁縫じゃなくてノコギリとかインパクトとか使うの好きで(笑)。空間全体をつくることが好きだから、(子供が主役のイベント)「もりのひ」も洋服関係なくて、段ボールで森全体を使って空間をつくることが楽しくて。確かに物はなんでも良いのかもしれない。

青:空間や世界観を自分自身でプロデュースしたいんだね。

倉:帽子屋とかアクセサリー屋とか花屋とか色々なジャンルのお店で働いてきたけど、プロデュースの仕方が違うのが面白かったんです。服の見せ方とか花の見せ方とか。「物」というくくりでは一緒だけど、生かし方が全く違う。私は帽子と花の見せ方は一緒だと思ってて、花は単体で完成されているけど、束にするとアレンジメントできたりとかまた違う見せ方になる。帽子も棚に並べた時に「どう花を咲かせるか」って視点でディスプレーしてました。
色々な職業してきたけど、見せ方という点で凄く勉強になった。小さなアクセサリーも、ただ並べてもその価値は伝わらなくて、空間をつくって「アクセサリーをどう生かすか」「どうやったらブランド力が上がるか」を考えるのが面白かった。概念を壊すの好きなんですよね(笑)。

青:壊すというのは?

倉:従来の見せ方をどう壊すか。例えば携帯ショップも「ザ・ケータイショップ」的なディスプレーじゃなくて、扱っているのは携帯だけど見せ方が全く違うみたいな。違和感を演出して、それを楽しんでもらえたらなと。全員には伝わらないけど、自分が楽しんでいることはお客さんにも伝わると思っていて、自分が無難だなと思うことはお客さんもそう感じるんじゃなないかと。

青:そこは自分の感覚を大事にしながらやってるんだね。

倉:服も柄物を取り入れるのは難しいんですよ。

青:確かにムズイ(笑)。怖くて着れない、震えてます(笑)。

倉:柄でどう遊ぶかを考えると楽しいですよ(笑)。

個性ドリブン#5[倉林 真知子]- シモツカレヤンキー コラボ企画 –

創作は自由だからこそ「自分軸」で評価

青:柄物も多く取り扱ってるけど、ブランドのこだわりは何かな。

倉:根本は「自分が着たいか着たくないか」。
自分が着てウキウキワクワク楽しい気分になる服が好き。柄の使い方ひとつでも遊び方は無限で取り入れ方次第。
傘も柄物が好き。雨が降って気分が上がらない時、楽しい傘を差して気分が上がるなら、派手な柄物傘に併せて服を地味目なコーディネートにするとか考えるの楽しいです。

青:そんな遊び方もできるのかー。やっぱり視点がトータルだね。天気まで含めてトータルコーデ。面白いね、空間が広い。

倉:私がつくる服は「機能」じゃなくて「気分」だと思ってるんです。
服は遊びだし不要なものかもしれないけど、あると毎日が楽しくなるもの。ANTのお客さんは男性も多いんですよ。「差し色に」とか、「自分らしいこだわりを持ちたい」と思っている人が、日常にプラスしてくれています。

青:トータルで考えられるところが強みだね。

倉:あちこち手をつけない方が良いとされている風潮があるじゃないですか。でもこれが私だから良いのかなと。結局トータルでやらないと気が済まないから。セレクトしたアイテムも含めて「ANT」だから。古着も雑貨も私が選んだものがコーディネートに入ることでトータルになるから。

青:それがブランドの個性だし、やりたいことでもある。既にやりたいことができてるんだね。

倉:18年くらいそんな感じで遊んでいるだけ(笑)。

青:ある意味、遊んでいる感覚って大事だよね。

倉:ワクワクしなくなったら終わりだと思っていて。委託販売も最近しないのは、私は店舗カラーを気にし過ぎると自分のカラーが死んじゃうことに気が付いて、自分の人間性を考えた上で合わないと思って委託販売はやめました。

青:海外に行く、つくる物を限定しない、委託をやめるなど、これまでの過程が今の自分をつくっているんだね。

倉:私の人生に無駄はひとつもないと思っていて、さまざまな経験こそ自分の強み。
昔、運命だと思った出会いがあったんですけど、職業を変えたいと思っていた時期にたまたま出会った方が皇室の洋服を手掛けていた方で。その方に「他の仕事をしてみたいと思いながらやってる今の仕事の時間は無駄な時間になってしまうのか?」と訪ねたら、「ジャンルは違えど自分の身になることは多いから、人生に無駄はない」と。それからは、「どんな仕事でも身になるんだ」と思えるようになりました。勝手に師匠だと思っています(笑)。

青:その経験が少しずつ自分をつくっていくというか、自分の色になるよね。もしかしたら服飾の学校に行っていたら全く違ったスタイルになったかもしれないね。

倉:私は逆に学校に行く必要性がないと思っていて、センスを誰かに判断されちゃうでしょ?自分のワクワクが殺されちゃう気がして。

青:先生になる人の評価軸で良し悪しを決められてしまうからね。

倉:その人の「これはこうしなくちゃいけない」になる。創作は自由で良いと思ってるから、私には向かないし、求めていない。自分の教室では枠にはめたくないから、基礎だけ教えてあとは自由に創作してもらいます。そうすると私の想像を超える凄いのをつくっちゃう生徒さんも出たりして(笑)。その方が見てるこっちも楽しいし、生徒さんも悩みながらつくれる。でも決まったゴールしかなければ、そこに向かうしかなくなって、自分が考えてつくるプロセスが抜けてしまう。

青:僕も本質的にクリエイティブに正解不正解はないと思っていて、「こうあるべき論」で縛られてしまっている人が多いよね。そこから外れると叩かれたりするから、新しいものが生まれにくくなっている。そこを開放して本来のクリエイティブの在り方を見つめ直した方が良い。

倉:そうしなと発想力がなくなる。

青:自分で考えられなくなるよね。他人の評価軸に合わせるから、自分で良いか悪いかの判断ができなくなるんだよね。

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自分の個性を信じ抜く

青:個性とはなんだと思う?

倉:まず自分が信じることを言葉として発したり、行動にすることで個性になるんじゃないかなと。何かを気にして動けなくなると個性は出せない。環境にもよるけど。
このアトリエに来る人でもお店をやりたいと思っている人多いけど、自分の世界観をちゃんと持っているのに踏み出せない人も多い。
個人で生きていくとしたら個性が宝だから、個性を武器に踏み出さないと埋もれるだけ。こだわりがあるなら、個性を出して自分でチャレンジする方が万人受けしなかったとしても楽しく表現できる。個性を出すということは良いも悪いも自分だから、悪い方に行っても得られるものはたくさんあるかなと。恐れずにチャレンジして欲しいです。

青:真知子ちゃんのように他人を気にせず突き抜けられる人もいるけど、一方でやりたいことを許容する世の中であることも大事だと思っていて、人と違うことをする人を否定したり認めない傾向もあるよね。そうじゃなくて、チャレンジする人を許容して応援する空気をつくらないと新しいことは生まれにくいし、自分らしく生きられるチャンス自体も減る気がする。

倉:応援する人は大事。私の両親は文句言いながらも支えてくれていて(笑)。応援してくれる人たちのためにも本気でやらないとね。

青:親御さんはかなり心配してたんだね(笑)。

倉:個人業で食べていけるか本当に心配されて(笑)。都内では当たり前だと思うんだけど、まだ栃木で作家活動している人が少ない時代だったから、「こんなので食べていけるか」と心配されて。でも自分の中では栃木とか都内とか関係なく、店を構えてブランドをやるって当たり前だと思ったから。
東京にはもっと素敵な個人ブランドがたくさんあるけど、競合が多いからメディアに取材される機会も少ないけど、栃木だとありがたいことに取材してもらえちゃう(笑)。都内のブランドと比べちゃうとまだまだ私なんかって思っちゃう。

青:インターネットが当たり前の時代になってきて、東京と地方の関係も変わってきている中で、その中で生き抜いていくためには個性を出さないとね。

倉:どこかのブランドをライバル視するよりも、「自分が楽しいからやっている」という主体でやってます。みんなが「良い」と言ってくれなくても、自分が楽しかったり、少しでも共感してくれる方がいるうちは続けようと思ってて。

青:自分を突き詰めるってことだよね。
とても面白かった。個性=ブランドってことだよね。ありがとう!

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あとがき

終わったあと、「取材される時、いつも同じ話をしてる」と言ってたのが印象的で、つまり昔から軸がブレていないということ。自分がやりたいかやりたくないかで取捨選択をしていて、その連続で生きているからこそ、自身を語る時は同じ言葉になるのかなと。この状態になれる人が意外と少なかったりします。

僕の思考とも近しいものが多く、話していて心地よい時間でした。

 

ANT:
栃木県宇都宮市吉野1丁目7−10 studio unknown 1F ANT atelier

新店舗オープン情報:大人のgift shop「bigott

3月頃open予定。 県内外の個人作家さんの作品や、デザイン雑貨、アンティーク家具、vintage服、ANTの服などを取り扱う店。
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