Home SPECIAL [特集]対談・これからの美の在り方と美容師

[特集]対談・これからの美の在り方と美容師

本サイトの大きなテーマの一つ「美」について、密接にかかわる2人の美容師が改めて「美容師とは」「美とは」について対談したスペシャル企画です。普段は鏡越しに見ていた美容師の本音、想いに近づいてみてください。

小山市・ヘアサロン「YUKURI」のオーナースタイリスト。福祉施設などへの訪問美容も手掛ける。
熊倉貴敏 さん
美容室YUKURI
都内有名ヘアサロンに勤務後、下野市の地域おこし協力隊に。フリーの訪問「美容屋」としても活躍。
大坪亜紀子 さん
地域おこし協力隊

栃木市のブランディングデザイナー、しもつかれブランド会議代表、青栁徹さんも登場!

不器用だから見えた「美容」

ツ クマさんはなぜ美容師に。

ク 実は、美容師に全く興味なかったんですよ。高校生の時からDJをしていて、音楽、ファッションの世界で生きていきたいと思っていた。でも、20歳の時に家が火事になってレコード、機材全て燃えて、「何か転換期かな」って。私服で趣味もつなげられることで思いついたのが美容師だった。

ツ 働きながら?

ク 働きながら通信で。

ツ クマさんの年代だとまだ修業は結構厳しい時代ですよね。男の美容師さんが多かった気がする。

ク でも僕が憧れたスタイリストさんは女性でしたよ。女性って話ながら器用にやるじゃないですか。僕のルーツはそこで、コミュニケーションがべース。

ツ 男の美容師が良いお客さんと女の美容師が良いお客さんがいて、男の人の方が「丁寧だから」と言う人もいますよね。

ク 男は女性に対してどう強弱付けて接していいか分からないから慎重になる。だから、丁寧に感じるのかも。

ツ 思いの部分ですよね。

ク でも、一回挫折したんですよ。最初にいた美容室が優しいお店でスタイリストになるのに2年かからなかった。

ツ 早い!

ク でも、不安が常にあった。だから技術に特化しているお店に入ったけれど派閥がすごくて辛くなってフェードアウト。「少し美容に距離を置こう」と思って27歳ぐらいの時、営業職で3年間働きながら、土日は美容室でアルバイトしていましたね。

ツ すごーい。

ク いずれ戻りたかったし、戻るときは独立と決めていた。それで30代になって「美容」に戻って、改めてお客様が指名してくれることのありがたさを実感できた。20代は「上手になりたい」「もてたい」って自分のための美容だったけれど、30代で「お客様のための美容」になったんですよね。

ツ 20代で多くの人に出合ったからこそですね。最初からうまくいく人は絶対、将来苦労するって思っていて、これからは人柄が求められる時代だと思う。

私はすごく不器用だった。でも、子どもの時から美容室で満足いく髪型にしてもらったことが無くて「私がなった方が良い」って美容師を目指した。負けん気だけで突っ走ってきたところがありましたね。行く行くは技術も大切と気付いたから、それも身に付けたときはすごく自信がついた。

ク その景色って不器用側にしか見えないんですよね。

美容師から「美容屋」に

ク 都内の有名サロンで120人くらい切っていた時があって、今は、訪問美容をされている。またサロンワークしたいって思いますか。

ツ 5年前くらいに「アシスタントに頼みながら美容はやりたくない」って思ったんです。なぜ今下野市の地域おこし協力隊をやっているかっていうと、違う考え方、世界を見たかったんですよね。クマさんがサラリーマンを経験した感覚と同じ。で、1年離れてみて思ったのは、2年後くらいには「美容屋」をやりたいなって。「美容師」と美容が付いていても、スキンケア、メーク、ファッション、インナービューティとか全般をやるわけではない。私は髪に特化しつつ、いろんなことも取り入れて「美容屋」としてやっていきたい。

ク 僕も美容師って言葉が好きじゃない。美容師っぽいって言われるのも好きじゃない(笑)。

ツ (笑)。

ク 今は太っちゃって一切言われないんですけど(笑)。

この前も「飲食店系かと思った」って(笑)。

ツ 爆笑。

ク もう楽しませられればなんでもいいや!って。

ツ 良いと思います。私も早く「ババア」になりたくて、「無理無理!あなたにピンクのチーク似合わないから」とかズバズバ言いたい(笑)。

髪を整えることも付加価値だけど、居心地の良さも含めて「美容屋」って名乗りたい。「気持ちまですっきりした!」って思ってもらえるような。

ク 「共感」しかない!

地方、個の「美」とは

ツ こうやって話してると、別に場所は関係ないっていうか、気持ちの共通点がこんなに出てくるって面白い。

栃木にきて感じたのは、「美容」が都内は「ファッション」、地方は「ライフスタイル寄り」かなって。そうすると地方では普段のお手入れがしやすいカットができて、「こうアレンジすると良いよ」「このアイテム便利だよ」って提案できることがすごく価値があるんじゃないかなって思う。

青 社会全般になっちゃうけど、超効率化派か超コミュニケーション派かの二極化になっていくよね。コミュニケーションを強みにファンをたくさん作って、つながりを深めていくのか、数をこなす効率化なのか。

東京はそもそも場所代が掛かるから、後者にならざるを得ない。地方は、相手の懐にさらに入っていけるかどうか。そこまでいけないと、少し気入らないと「他の美容室に」ってなっちゃう。

ク 僕はヘアのデザインっていうより、「時間をデザイン」したい。だから、毎回お客様の記録にメンタルのことも書く。その日の様子に合わせてBGM変えたりとかも。

子育てして一層コミュニケーションのこと考えるようになって、自分の好きなもの、普段何してるとか、弱み見せちゃうとかすると、構えているお客さんも心開いてくれるんですよね。僕は基本緩いんで、ここだとフラットでつながれるかなって。そうそう僕ゆるキャラなんですよ。

ツ (笑)。

青 それくらい緩い方が相談しやすい。

ク 自分は抜け過ぎですけどね(笑)。

青 細かい接点を一個一個気にしながらデザインしていくのはすごい大事だよね。だからさらけ出すって重要なんだよね。自分から笑う。相手を笑わせたかったら自分がまず笑わないと。気に入らない髪型のときに言える関係性が築けているか否か。その環境が作れているか否かで満足度は変わるよね。

ツ お客様それぞれで必要な言葉って違う。それがきちんと選べた時に「あ、自分こんな言葉が掛けられるようになった」って思えるのが楽しいんですよね。

青 では最後に、「美しさ」とは。

ク 内側から出るもの。「らしさ」「個性」って狙って作れるものではない。

ツ 私もそれは間違いないと思ってるんですけど、年を重ねると思い描いていた内側から出てくる美しさだけでなく、隠したいシミ、しわとかも出てくるんですよね。だから、人から掛けられる言葉で自信がつくことが美しさと定義されることもあるのかなって。美容師はそれぞれの美しいを定義づけてあげることも仕事なのかなって思います。

related articles

Leave a Comment